2台めシロフォン(=木琴)との出会い
2007年夏、マリンバ奏者の佐藤梨栄さんから日本木琴協会阪神支部創立50周年記念コンサートのご案内が届きました。ゲストは、ネイ・ロサウロと佐々木達夫。
佐々木達夫さんは主に海外で活動されているので、国内では知る人ぞ知る、という存在。でも、私にとっては「特別なプレーヤー」でした。実は、中学生の時、マリンバのレッスンで先生から佐々木達夫さん演奏のテープを聴かせていただいたことがあり、その音色にいたく感激、カセットテープをダビングしてもらい、長く大切に聴いていたのでした。その時は、よくわからなかったのですが、その音色こそが、マリンバではなく、ヴィンテージ・シロフォンだったというわけです。
コンサートでは、初めての佐々木さんの生演奏を感慨深く聴き、終演後には少しお話しすることができました。
演奏会の後しばらく佐々木さんのシロフォンは、神戸の佐藤さんのお宅に保管されているとのこと。佐藤さんから「佐々木さんの了解も得ているので、是非」とお誘いいただき、お邪魔することに。
その楽器は、平岡モデルと同じ機種「DEAGAN ARTISTS SPECIAL XYLOPHONE No.264」 。フレームは違うものの、鍵盤の「顔」は同じ。まるで「兄弟」を見るようでした。
その後、佐々木さんとも直接メールでのやりとりをするようになりました。佐々木さん曰く、これまで、シロフォンを弾く人に出会えず、ご自身が弾かれなくなったらシロフォンの時代も終わるのかなと、寂しい思いをしていたとのこと。実際シロフォンに興味を持たれた方がおられたものの、マリンバとは演奏法が異なるため相当弾きこまないと音楽作りが難しい等の理由で諦められてしまったそうです。
なので、私がシロフォンの音に魅力を感じて弾いていることを喜んでくださいました。
実は、私は弾き込むも何も、マリンバよりシロフォンの方が身体にしっくりくる、と思ったくらいで...
そんなやりとりの中で、「オーケストラをリタイアし演奏活動も少しずつ減らしていっているので...」という話しがあり、そして昨年暮「シロフォンを手放そうと思っている。あなたに弾いてもらえるなら...」とのご連絡をいただいたのです。
平岡シロフォンの鍵盤は、音色は申し分ないものの、コンサート活動で酷使した上、調律(鍵盤を削る)が繰り返されていたため、寿命を考えると不安もありました。自分がシロフォニストとしても活動していく上で、もう一台同種の楽器があればと思いながらも、「60年代頃改良の1930年代製」との条件をクリアする楽器が手に入るはずなどない、と決めてかかっていました。あきらめて新型のシロフォンを購入しようか、鍵盤を誂えようか、と検討していたタイミングだったので、こんなにうれしい話しはありません。
一度佐藤さんのお宅で見ている楽器なので、改めて試奏するまでもなく、ゆずっていただくことに決めました。
長い説明になりましたが、そんな楽器が、ようやくうちに届いたというわけです。
佐々木さんのシロフォンは調律されていない分、若干音程の狂いはあるものの、ニスもはがれず鍵盤の状態がよい。
なので、手入れのしようによっては、これからまだまだ楽器として進化を遂げる可能性を秘めているように思います。
佐々木さんは、楽器を調律することは、自身の身を削られるようでできなかったとおっしゃっています。私も一台目である平岡さんの楽器に対しては同様の思いです。でも、この2台目については、良い意味での距離があるので、それがかえってよい方向に向けられるような予感がしています。長男と二男で子育てが違う、という感じかな。それぞれの楽器にそれぞれへの愛情を注ぎ、つきあっていきたいと思っています。
みなさんにこの楽器の音色を聴いていただくのは少し先になると思いますが、楽しみに待っていてください。
佐々木さんについては、こちらで紹介記事を読むことができます。